化学合成農薬や化学肥料の使用量は通常の50%以下
2001年、滋賀県の環境こだわり農産物制度が誕生しました。環境こだわり米の内容は、化学合成農薬や化学肥料の使用量を通常の50%以下にする。遺伝子組み換え技術を使った種子や種苗は使用しない。水田からの濁水の流出防止、栽培記録の徹底など。アグリ甲賀の栽培方法は、環境こだわり米の内容にほぼ合致していました。当時畔に使っていた除草剤を草刈りに変えるだけであてはまるためすぐに申請。当初は看板も立てて、PRしながら米づくりをしていました。JAこうかでも「実は簡単につくることが出来る」とPRした結果、JAこうか管内は県内で最も環境こだわり米の割合が多い地域となっています。
美味しいお米の数値が出ているので、自信があります
アグリ甲賀では、主に「きぬむすめ」「コシヒカリ」、そして酒米の山田錦を栽培しています。キヌヒカリと祭り晴を交配して生まれた品種が、きぬむすめです。湖南市の水に合っており、硬さや粘りのバランスも良く、つくりやすいですね。実際に、私が食べて一番美味しいと感じたお米でもあります。最初にお米を提出した滋賀県稲作経営者会議では、食味値を測ってもらいました。一般的には80を越えるとおいしい米。85を越えるととてもおいしい米。その中で、アグリ甲賀の米の数値は87。美味しさをPRするためには、言葉や感覚だけではなく根拠のあるPRが必要です。この数値は自信になりました。
酒蔵のニーズに合ったものを契約販売することに
山田錦を栽培するようになったのは、偶然の産物です。消防団の活動の際に隣にいたのが小学校時代の同級生。「誰か酒米をつくってくれへんかな」との言葉に、つくっているよと話したことがきっかけとなり、彼の勤め先である北島酒造に話をしに行きました。山田錦には倒れやすいイメージがありましたが、問題なく収穫できて量もあります。そして食用米よりも値段も高い。単収はやや少ないですが、金額でフォローができます。酒蔵のニーズに合ったものを販売する、契約販売の方法はひとつの転機となりました。
美味しいお米の数値が出ているので、自信があります
滋賀県の仲間、全国の農業者の方と一緒に、ベトナムで開催された稲作の経営者会議に参加しました。ベトナムの北部は日本と似た四季のある気候ですが、南部は常夏です。そのため年間に日本の極早生品種が3回収穫できます。「世界に目を向ける」「グローバル化」との言葉が盛んですが、実際に外国の米づくりを自分の目で見てからは考えが変わりました。ベトナムの物価は安いですし、日本の品種の米を1/3の値段で売ることができます。そして年に3回収穫できる。そもそも、年に3回と年に1回の米を値段で勝負しても勝てるわけがありません。味で勝負といっても限界があります。世界に通用するのかと言われたら、厳しいでしょう。
そこで考えたのは「もっと地元に需要があるのでは?」ということ。今の主な納品先は酒蔵、レストラン。どれも地元です。地元でお互いの顔が見える販売。実際に私が届けに行くことで、感想を聞くことができます。お客様がこれが美味しいから袋詰めでつくって欲しいと言う。それをまた取引相手が勧めてくれる。これは、地元を大切にしているからこそです。
地域や人と共存すること
変わらず行っていきたいのは、地域や人と共存すること。郷に入れば郷に従え、です。最初はトラブルもありました。でも「お前頑張ってるな」と認めてもらえるところまで行くことが重要。今は「水、見といたったで」「お前ら忙しいから草刈りしといたったわ」というような形で支えてもらっています。自分だけがよければいいとの考えでは農業は続きません。農業をするためには、水はどこから引っ張ってくるのか等知る必要があります。これからも敵をつくらず、やっていきたいですね。
地区で、湖南市単位で、ひとつのグループになること
今後の目標は、今、地区ごとにある営農組合をひとつのグループとしてまとめることです。1枚の田んぼの作業後にトラックに乗せて移動し、また別の田んぼに下ろして作業するよりも、横続きで同じ品種をつくる方が効率も良く、品質の良い米ができます。それを湖南市単位でやりたいですね。アグリ甲賀がお預かりしている田んぼだけではなく、他の人も巻き込んだ形をつくることでもっと儲かる農業ができるだろうと思います。